コンプライアンス研修(8)~副業・兼業と労働時間

副業・兼業の法整備

厚生労働省では、「働き方改革実行計画」(平成29年3月働き方改革実現会議決定)副業に関する 法整備に着手。

平成30年1月、副業・兼業のガイドライン作成「副業元年」

当初は、労働時間の管理方法に関する記載がなかった。
ルール明確化のため、令和2年9月にガイドラインを改定。
副業する場合の労働時間管理についての記載を追加・充実。

令和4年7月にガイドラインを改定。
国は副業・兼業の法整備をすすめている。

労働基準法38条(労働時間)

「事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定。
参照:労働基準法(e-Gov法令検索)

副業や兼業の労働時間は、原則として本業と通算される。但し、適用外のケースあり

使用者は、労働者側からの申告により、副業・兼業の有無・内容を確認する。確認の仕組みを設け、企業は労働時間を正確に把握・管理する体制を整えるのが望ましい。
厚生労働省:副業・兼業の促進に関するガイドライン より要約

労働基準法が適用されないケース①

労働基準法では「労働者」について以下の様に定義。
「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われる者」

そのため、特定の事業または事務所に属さずに働いている者は労働基準法の適用を受けない。
EX)フリーランスや独立、起業、共同経営、アドバイザー、
コンサルタント、顧問、理事、幹事等

労働基準法そのものが適用されない職種に関しては、副業を行っても労働時間の通算は不要

労働時間規制が適用されないケース②

【対象外】労働基準法 第41条および41条の2に該当
①土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業に従事する者

②動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業に従事する者

監督もしくは管理の地位にある者、または機密の事務を取り扱う者

監督または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可受任者

⑤高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとしてる者(高度プロフェッショナル制度に該当者

時間外および休日の労働

上限規制
→原則:月45時間・年360時間
違反したら罰則(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)

例外:臨時的な特別の事情+労使が合意する場合(特別条項)
①時間外労働が年720時間以内
②時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
③時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」
「4か⽉平 均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
④時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度

労働時間を通算するルール

労働時間の通算は、原則的に以下のルールで行う。

先に契約をしたAから、後に契約をしたBの順に通算。

②実際に所定外労働が行われる順に通算。A→B

「変形労働時間制」や「みなし労働時間制」も同様

 

副業制を設けるための会社が検討すべき事項

①就業規則やその他の社内規定の整備
②残業制度をどうするのか?
③源泉徴収の取り扱いや社会保険制度の整備
④社内秘密、機密情報の漏洩の危険性の吟味
→詳しくは「厚労省HP」や「専門家」への相談

 

 

投稿者プロフィール

山田 訓敬
山田 訓敬弁護士 
弁護士法人山田総合法律事務所 代表弁護士
平成8年 最高裁判所司法研修所入所(50期)
平成10年 弁護士登録
福岡県弁護士会所属