1,強制執行
強制執行とは,債務者(賃借人)が任意に賃料等の支払をしない場合において,判決等の債務名義を得た債権者(賃貸人)の申立てに基づいて,債務者に対する請求権を裁判所が強制的に実現する手続。
2,債務名義
強制執行の基礎となる文書のことであり,その種類は民事執行法第22条で規定されている。
【具体例】
・判決
・和解調書
・支払督促
・公正証書
3,債務名義の種類
(1)公正証書
金銭の一定の額の支払い等を目的とする請求について公証人が作成した文書で,債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものについては,公正証書に基づいて強制執行ができる。
・訴訟等の裁判手続を経ることなく強制執行をすることができる。
・賃貸借契約書を公正証書で作成する。
・未払賃料を支払うことを内容とする公正証書を作成する。
(2)支払督促
債権者(賃貸人)の申立てに基づいて裁判所書記官が債務者(賃借人)に金銭の支払いを命じる略式の手続で,書類審査のみで行われる。訴訟手続と違って,裁判所への出頭や証拠の提出は必要ない。
・ 債務者(賃借人)が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ,裁判所は,債権者(賃貸人)の申立てにより,支払督促に仮執行宣言を付さなければならず,債権者はこれに基づいて強制執行をすることができる。
・ 債務者(賃借人)から異議が申し立てられれば,通常の訴訟手続に移行する。
(3)和解調書・判決
債務者(賃借人)を被告として訴訟を提起し,その訴訟手続の中で,債務者との間で未払賃料を支払うという和解ができれば,その旨の和解調書を作成する。債務者が約束を破って未払賃料を支払わなかった場合には,和解調書に基づいて強制執行をすることができる。
債務者が出頭しなかったり,出頭しても和解ができなかった場合には,未払賃料を支払うことを命じる判決を取得して,判決に基づいて強制執行をすることができる。
4,強制執行の方法
(1)財産調査
強制執行をするためには,債権者(賃貸人)において,強制執行の対象となる債務者(賃借人)の財産を調査しなければならない。
・弁護士会照会という制度があり,例えば金融機関に対して債務者が預金を持っているかを照会し,債務者の財産調査をすることができる。
・判決等の債務名義を取得している場合には,金融機関等の照会先も照会に応じやすくなる。
・照会先が銀行であれば,預金口座の有無,支店名,残高等が開示される。
(2)債権執行
債権執行は,債務者(賃借人)が第三債務者に対して有する債権を差し押さえて行う強制執行手続。
・預金債権の差押え(金融機関・支店名の特定が必要)
・給与債権の差押え(債務者の手取金額の4分の1まで)
・預金債権を差し押さえたなら金融機関から,給与債権を差し押さえたなら債務者の勤務先から,差し押さえた金額に相当する金銭を直接支払ってもらうことができる。
(3)動産執行
動産執行とは,裁判所の職員である執行官が債務者(賃借人)の占有する動産を差し押さえて,これを競売等の方法で換価し,債務者の弁済に充てる強制執行手続。
・通常は,明渡しの強制執行手続の際,執行官と賃借人の自宅に「いついつまでに退去してください。」と明渡しの催告に行くが,その時に,執行官が財産的価値のある動産があるかどうかを確認し,あれば差押えの手続を行う。
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