コンプライアンス研修 (5) 景品表示法
回転ずし大手「あきんどスシロー」(大阪府吹田市)が昨年9~12月、店舗にウニやカニのすしの在庫がなく、提供できないと分かっていながらテレビCMやインターネット上で広告したなどとして、消費者庁は景品表示法違反(おとり広告)で再発防止を求める措置命令を出したとニュースで見ました。
そもそも、景品表示法って何?どんなことを規制しているの?
法律の趣旨
景品表示法(正式には「不当景品類及び不当表示防止法」、以下、単に「景表法」といいます。)とは、独占禁止法の特例として定めらた法律で、不当な顧客誘引行為である①不当な表示禁止と②過大な景品類の提供を禁止しています。
独占禁止法というのは、市場における公正かつ自由な競争を促進することを目的とした法律で(独占禁止法1条)、この目的を達成するために、市場における公正かつ自由な競争を制限・阻害する行為を禁止しています。その禁止されている行為の一つとして「不公正な取引方法」があります。わかりやすく言うと、「社会では、自由競争で商売をないとダメですよ。インチキは許しませんよ。」という法律です。
そして、この「不公正な取引方法」には、(独占禁止法上、公正取引委員会が指定することになっているのですが)「ぎまん的顧客誘引」と「不当な利益による顧客誘引」があり、これらをより具体化したのが、景品表示法の①不当な表示の禁止と②課題な景品類の提供禁止なのです。
消費者が商品やサービスを選ぶ際に、実際よりも良く見せかける表示が行われたり、過大な景品付き販売が行われると、それらにつられて消費者が実際には質の良くない商品やサービスを買ってしまい不利益を被る恐れがあるため、消費者保護の観点(ひいては自由競争確保の観点)からこのような規制がなされているんです。
不当表示規制
不当な表示の禁止としては、次の3つがあげられます。
(1) 優良誤認表示(景表法5条1号)
商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示
例えば、カシミヤ混用率が60%程度のセーターに「カシミヤ100%」と表示する等、内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示や、「当社独自の技術」と表示していたが、実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していたといった、内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示のことです。
(2) 有利誤認表示(景表法5条1号)
商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示
例えば、当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨表示していたが、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合等、取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示や、「他社商品の3倍の内容量です」と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量にすぎなかったといった、取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示のことです。
(3) 商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(景表法5条3号)
具体的には、無果汁の清涼飲料水等についての表示、商品の原産国に関する不当な表示、消費者信用の融資費用に関する不当な表示、不動産のおとり広告に関する表示、おとり広告に関する表示、有料老人ホームに関する不当な表示等があります。
今回のスシローの問題は、この「おとり広告に関する表示」の一態様である「取引の申出に係る商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示」に該当するのではないかという点が問題になったのです。
景品規制
事業者が課題景品を提供することにより消費者が課題景品に惑わされて質の良くないものや実質的には割高なものを買わされて消費者の不利益となることを防止するため、景表法では、景品類の最高額、総額等を規制しています。
一般に、景品とは、粗品、おまけ、賞品等を指すと考えられますが、景品表示法上の「景品類」とは、
(1)顧客を誘引するための手段として、
(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3)物品、金銭その他の経済上の利益
であり、景品類に該当する場合は、景品表示法に基づく景品規制が適用されます。
景表法に基づく景品規制は、(1)一般懸賞に関するもの、(2)共同懸賞に関するもの、(3)総付景品に関するものがあり、それぞれ、提供できる景品類の限度額等が定められています。限度額を超える過大な景品類の提供を行った場合などは、消費者庁長官は、当該提供を行った事業者に対し、景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができます。
違反したら
景表法に違反する不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施し、調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、違反事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られます。
また、事業者が不当表示をする行為をした場合、景品表示法第5条3号に係るものを除き、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じます(課徴金納付命令)。また、違反行為を迅速、効果的に規制できるよう、都道府県知事も景品表示法に基づく権限を有しており、違反行為者に対して、措置命令を行うことができます。
対策
景表法は、故意ではなく、知らず知らずのうちに規制違反をしていることが良くあります。
「これくらいの広告は他でもしているから問題ないだろう。」「お客様のために贅沢な景品を提供したにすぎないのに…。」といったことで結果的に違反して、結局は企業イメージを損なう結果になってしまうことが良くあります。
景表法違反かどうかは、先例や判例の知識、政令指定の有無等の専門的な知識が必要となりますので、何か広告をする、景品やクーポンをお客様に渡すといった際には、弁護士にリーガルチェックをしてもらうことを強くお勧めいたします(もちろん、当事務所でも対応しております。)。
投稿者プロフィール
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弁護士法人山田総合法律事務所 代表弁護士
平成8年 最高裁判所司法研修所入所(50期)
平成10年 弁護士登録
福岡県弁護士会所属